しかし、彼女の容姿や体型は彼の好みのタイプで、趣味までも彼と同じだった。
藤崎千明は少し興奮して、誘いの言葉を口にした。
「まだ早いし、よかったら...一緒にコーヒーでも飲みませんか?」
伊藤冬芽は風で乱れた髪をかっこよくかき上げながら言った。
「すみません、あなたとコーヒーを飲む気はありません」
「気が...ない?」女性に断られることが稀な藤崎千明は、一瞬自分が断られたことを信じられなかった。
「そう、あなたとコーヒーを飲む気もないし、もう会いたくもない」
伊藤冬芽は断りの言葉を言いながらも、顔は特に優しく笑っていた。
「理由!理由を言ってくれ!」藤崎千明は腰に手を当てて怒った。
兄以外には、女性の前で負けたことがなかった。
会って5分も経たないうちに、お見合い相手に断られるなんて。
彼女に会うために朝早くからこんなにかっこいい髪型と服装に整えてきたのに、彼女は彼を断った。
「理由なんてない、ただあなたのようなタイプが好きじゃないだけ」伊藤冬芽はまだ笑っていて、顔には浅いえくぼが浮かんでいた。
藤崎千明は彼女を数秒間じっと見つめ、どこかで見たことがあるような気がしたが、どこで会ったのか思い出せなかった。
「ねえ...どこかで会ったことありませんか?」
さっきえくぼを見せて笑った姿は、確かに見覚えがあった。
伊藤冬芽は可笑しそうに言った。「藤崎の三の若様、そんな女の子を口説く言葉は、もう時代遅れですよ」
藤崎千明は歯を食いしばった。「わかった、それはいいとして、君は私に会って数分で、なぜ私のようなタイプが好きじゃないと決めつけるんだ?」
「あなたのような自己陶酔的な人は好きじゃないの」伊藤冬芽はそう言いながら、目には嫌悪の色が浮かんでいた。
「自己陶...陶酔?」藤崎千明は怒りで言葉が詰まり、自分を指さして言った。「これは自信だよ、自信って分かる?」
こんなにかっこいいのに、自己陶酔がどうした?
どうしたっていうんだ?
「分からないし、知りたくもない。さようなら」
伊藤冬芽はそう言うと、振り返ることなく立ち去った。
「君は...後悔するぞ!」
藤崎千明はとても腹を立てていた。こんなにかっこいい自分が、お見合いで一発で断られるなんて。