工藤みやびは少し驚いたが、すぐに反応して微笑んだ。
「もちろん興味があります。」
彼女はさっきまで、このように慌ただしく会っただけで残念に思っていたが、マーティンが降りてきて彼らがここで夕食を取れると告げるとは思わなかった。
そして次の瞬間、カーマン・ドランスが彼女の前に現れ、自ら彼の家を案内したいと申し出た。
カーマン・ドランスは先導し、気さくにこの古城の歴史について彼女に語った。世間で噂されるような、傲慢で深遠なドランス家の当主とは全く違っていた。
工藤みやびは礼儀正しい距離を保ちながら、彼と共に歩き、彼の話に微笑みながら耳を傾けた。
これは彼女が二十数年の人生で初めて、この実の父親にこれほど近づいた時だった。おそらく...最後の機会でもあるだろう。
過去を手放すと決めたからには、工藤みやびに関するすべてを手放すべきだった。
工藤家も、遅れてきた実の父親も。
マシューは書斎の窓辺に立ち、遠くの芝生でゆっくりと歩きながら談笑する二人を見ていた。まるで初対面とは思えない様子だった。
カーマン・ドランスと長年の友人として、彼の性格をよく知っていた。初対面の人にこれほど友好的であることはめったになかった。
今日は、この日本人の女の子に対して、特別な例外を作ったようだ。
カーマン・ドランスは彼女を古城の裏側へ案内した。そこには既に散ってしまった藤の花があった。
工藤みやびはそれを見て驚きと共に、心に複雑な感情が湧き上がった。
「なぜ藤の花が?」
カーマン・ドランスは一瞥して言った。
「私の娘、ビビアン・ドランスが生きていた頃、彼女は藤の花が大好きだった。」
工藤みやびは唇を噛み、鼻先がしみた。
「花が咲く時は、きっとすごく綺麗でしょうね。」
「そうだ、花が咲く時は非常に美しい。残念ながら、彼女には戻ってきてそれを見る機会がなかった。」
カーマン・ドランスは物悲しくため息をつき、杖をつきながら前を歩いて彼女を案内し続けた。
工藤みやびは前方の背中を見つめ、目から溢れそうになる涙を必死に堪えた。
彼女は、彼が彼女を工藤家に置き、何年も彼女を見に来なかったのは、この娘のことをすでに忘れてしまったからだと思っていた。
あるいは、彼女の存在が彼にとってそれほど重要ではなかったのだと。
しかし、この瞬間、彼の心の内を本当に理解した。