工藤みやびがヨーロッパでの仕事と予定を終えている間、藤崎千明はお見合い相手に自分の魅力をアピールするのに忙しくしていた。
その後、彼女はオーストラリアへ向かい、映画のロケハン担当者と合流して、オーストラリアでのいくつかの撮影地を確認することにした。
ロケハン担当者が見つけた場所は、オーストラリアの北方領土の無人地帯にあった。
石橋林人が風邪をひいていたため、彼女は林人と岡崎アシスタントを連れて行かなかった。
彼女自身と三浦星安、それに映画のロケハン担当者一名と現地ガイド一名で車に乗り、無人地帯を横断することにした。
道のりは遠く、車の揺れで大変だったが、見つけたロケ地はどれも映画のシーンにぴったりだった。
彼女が実際に見た後、撮影するイメージが完全に頭の中で構築できていた。
ただ、道中は携帯の電波が不安定で、藤崎雪哉との連絡もそれほど密にはとれなかった。
しかし、携帯の電波が入る場所に着くたびに、彼女は彼に短いメッセージを送って無事を知らせていた。
三日以上経った頃、三浦星安が妙に警戒し始めた。
みやびがどこへ行っても、彼女はぴったりとついて来て、トイレに行くときさえも一緒についてくるのを忘れなかった。
「私は三歳の子供じゃないんだから、迷子になったりしないわ。なぜそんなにくっついてくるの?」
三浦星安はガムを噛みながら言った。
「後ろに二台のハマーがいるの。この三日間、時々私たちの周りに現れるのよ」
前回の映画祭で彼女が事件に巻き込まれ、派遣された人が死傷したことを知っているので、同じことが繰り返されないように警戒を強めるのは当然だった。
工藤みやびは小川のそばで手を洗い、彼女の言葉を聞いて言った。
「たまたま同じ道を通っているだけかもしれないわ」
無人地帯は人の姿はまれだが、普段から冒険好きな旅行者が車で無人地帯を横断するのは珍しくなかった。
「一度や二度なら偶然かもしれないけど、今日あなたたちがロケハンした時、あの道を通らなかったでしょう。車のスピードから計算すると、彼らはとっくに私たちの前を走っているはずよ」
三浦星安はそう言いながら、周囲の環境を注意深く観察していた。
工藤みやびは彼女の言葉を聞いて、表情も自然と真剣になった。
「味方じゃないの?」