第554章 こんなに甘ったるいのは適切ですか？

工藤みやびは長いまつげを伏せ、目の奥に一瞬よぎった暗い感情を隠した。

「どうして、彼女が工藤姓だから？」

藤崎雪哉は片手で彼女を抱き寄せ、頭を下げて彼女の額にキスをした。

「僕が好きなのは君だよ、君だけだ。」

工藤みやびは腕を伸ばして彼の首に抱きつき、彼の肩に顔を埋めながら背後の窓を見つめた。

心の中で何度も繰り返し浮かんでいた疑問が、また一度心に押し寄せてきた。

藤崎雪哉、もし私が工藤みやびでなかったら、あなたは私をこんなに好きでいてくれるの？

私が誰であっても、あなたは私をこんなに好きでいてくれるの？

藤崎雪哉は書類を置き、彼の首に回された手を取った。

「どうしたの？」

工藤みやびは軽く顔を上げ、桜色の唇を薄い唇に押し当ててキスをした。

「明日の朝には出発するのに、まだ仕事するの？」

「もう少しだけ。」

藤崎雪哉は思わず笑い、再び書類を手に取り、早く仕事を終わらせようとした。

工藤みやびは彼の顔を自分の方に向けさせ、「仕事が大事なの、私が大事なの？」

藤崎雪哉は仕方なく書類を置き、彼女を一気に抱き上げて書斎を出た。

「もちろん君が大事だよ。」

しかし、このような珍しい積極性は、いつも深刻な結果をもたらすことになる。

部屋に戻って2時間も経たないうちに、彼女は彼を書斎に蹴り返して仕事をさせたいほどだった。

夜中、藤崎雪哉は彼女を浴室に送り入浴させ、自分は書斎に戻って残りの仕事を片付けた。

仕事が終わったところで、三浦大也から電話がかかってきた。

「カランスの調査について、工藤家はあまり反応を示していないようです。」

藤崎雪哉は少し黙った後、「少しの異変もない？」

「ありません。彼らがすでにすべての証拠を消し去ったか、工藤みやびの死が本当に彼らと無関係なのかのどちらかです。」三浦大也は言った。

藤崎雪哉は表情を引き締めて沈黙した。本間壮佑が雅に言ったことによれば、それは工藤家と無関係であるはずがない。

「堀家について調べたか？」

死後、心臓が堀夏縁に移植された。そこに何か裏があるかもしれない。

「彼らはすでに調査を始めているはずです。私たちが介入するのは適切ではありません。」三浦大也は言った。

藤崎雪哉：「進展を見守っていればいい。」