第555章 変なイチャイチャを見せないで、私は見たくない

それに、彼女はただ一つのハートマークを作って去っていったわけではなかった。

彼女は数歩歩いては、振り返ってハートマークを作った。

ハートマークを作るだけでなく、さまざまな国の言葉で「愛してる」と告白した。

I love you

サランヘヨ

アイシテル

……

一言言うたびに、ハートマークを一つ。

石橋林人は耐えられずにスーツケースを押して早足で立ち去った。この恋人たちのイチャイチャを見たくなかった。

藤崎雪哉は少女の愛らしい姿を見て、厳しい表情が明るい笑顔に変わった。

彼女が遠ざかり、エレベーターに乗って見えなくなるまで見送ってから、ようやく車に乗って会社へ向かった。

彼女のさっきの可愛らしい姿を思い出すと、薄い唇がまた思わず笑みをこぼした。

石橋林人はエレベーターに入ると、すぐに普段の自分のアーティストの態度に戻り、呆れて文句を言った。