第555章 変なイチャイチャを見せないで、私は見たくない

それに、彼女はただ一つのハートマークを作って去っていったわけではなかった。

彼女は数歩歩いては、振り返ってハートマークを作った。

ハートマークを作るだけでなく、さまざまな国の言葉で「愛してる」と告白した。

I love you

サランヘヨ

アイシテル

……

一言言うたびに、ハートマークを一つ。

石橋林人は耐えられずにスーツケースを押して早足で立ち去った。この恋人たちのイチャイチャを見たくなかった。

藤崎雪哉は少女の愛らしい姿を見て、厳しい表情が明るい笑顔に変わった。

彼女が遠ざかり、エレベーターに乗って見えなくなるまで見送ってから、ようやく車に乗って会社へ向かった。

彼女のさっきの可愛らしい姿を思い出すと、薄い唇がまた思わず笑みをこぼした。

石橋林人はエレベーターに入ると、すぐに普段の自分のアーティストの態度に戻り、呆れて文句を言った。

「ねえ、もう社長とあれだけイチャイチャしたのに、別れる時もまだ足りないの?」

「この数日じゃ足りないわよ、一生だって足りないくらいなんだから」と工藤みやびは言った。

石橋林人:「イチャイチャ見せびらかさないでよ、見たくないから」

二人は搭乗ロビーに着くと、岡崎アシスタントの他に、新しいアシスタントがいた。

しかし、全くアシスタントには見えない。小柄で、少し丸顔で、ちょっと可愛らしい感じだった。

石橋林人は小声で言った。「社長が手配した人だ。連れていくように言われている」

おそらく、前回のような事件があったため、密かに手配したボディガードだけでは安心できず、彼らに身近な護衛を付けさせたのだろう。

「こんにちは、荒木さん。私は三浦星安です」

工藤みやびは彼女を一瞥して、笑いながら言った。

「三浦大也の妹?」

三浦星安:「すみません、私は彼の姉です」

「……」

工藤みやびは口角を引きつらせた。あの熊のような体格の三浦大也に、こんなに可愛らしい姉がいるなんて?

本当に彼女を守るために派遣されたのであって、可愛さをアピールするためじゃないの?

三浦星安は彼女が笑いそうな表情を見て、言った。

「私の実力を疑わないでください。彼は小さい頃から私にボコボコにされてきたんですから」

「疑ってないわ、星安姉さん。これからよろしくお願いします」工藤みやびは急いで笑みを引き締めた。