工藤みやびは少し考えて、アイマスクをつけながら言った。
「きっと、彼のお見合い相手はとても美人なんでしょうね。」
藤崎千明という人は、女の子が十分に美しければ、お見合いにも喜んで行くタイプだ。
石橋林人はうなずいた。おそらくその通りだろう、さもなければ彼はあんなに念入りに身だしなみを整えたりしないはずだ。
一行がイタリアのローマに到着したのは、すでに夜だった。
マーティン・グリーンが自ら空港まで迎えに来て、彼女を見ると興奮して抱きしめようとしたが、彼女のボーイフレンドである藤崎雪哉のことを思い出し、我慢せざるを得なかった。
そのため、ただ簡単に握手をするだけだった。
「無事で良かった。」
以前、映画祭で事件が起きたと知った時、彼も彼女と連絡が取れなくなっていた。
彼女のマネージャーは行方不明になったとだけ伝え、何日も経ってから、やっと彼女が無事に日本に戻ったという知らせを受けた。