伊藤冬芽はメイクを落として服を着替えると、彼らのキャスティング写真の撮影を見に来た。
工藤みやびが最初に撮影を行い、数分で一組の撮影を終えた。
彼女は撮影された写真を一通り確認した後、他の人たちに撮影を始めるよう指示し、自分は脇に立って俳優たちが表現すべき内容を指導した。
全員の撮影はスムーズに進んだが、藤崎千明のところで行き詰まった。
彼が演じる役は精神疾患患者なのに、今カメラの前に立っている彼は、ひたすらカッコつけていて、時に明るく、時に冷酷に、時にはお洒落で粋な感じに……
撮影スタジオにいた若い女性メイクアップアーティストやカメラアシスタントたちは、胸を押さえて悲鳴を上げるほど魅了されていた。
藤崎千明は満足げに口元を緩めて微笑んだ。ほら、彼はまだまだ魅力的だ。