第597章 キング級の弟イジメ

「彼女との関係は?」伊藤冬芽は眉をひそめて尋ねた。

彼女と彼、一体どんな関係なのか?

二人の関係はとても親しげに見えるが、恋人関係というわけでもなさそうだ。

「もちろん、部外者には言えない関係さ」藤崎千明は神秘的に微笑んだ。

この人は彼に興味がないと言いながら、彼が荒木雅と関係があるかどうかをこんなに気にしている。

おそらく、口では否定しているが心では違うのだろう。

伊藤冬芽の顔の笑顔は少し硬くなり、それ以上追及しなかった。

工藤みやびは衣装合わせの写真を確認し終えると、時間を見て他の人たちに別れを告げた。

藤崎千明は実の兄に断られ、彼女に直接話しかけるしかなかった。

「お義姉さん、ちょっとこっちで話そう」

工藤みやびは彼と数歩離れたところに行き、小声で言った。

「話があるなら早く言って、あなたのお兄さんが迎えに来てるから」

「僕と伊藤冬芽とコーヒーを飲みに付き合ってよ、30分だけでいいから」藤崎千明は取り入るような笑顔を浮かべた。

彼女が行かなければ、伊藤冬芽も行かない。そうなると彼はまた失敗することになる。

工藤みやび:「あなたが彼女とコーヒーを飲むのに、私が行く必要はある?」

「君が来ないと、彼女は僕と行かないんだ」藤崎千明は哀れっぽく懇願した。

工藤みやびは信じられないという顔で、彼のしつこい様子を見つめた。これはどう見ても復讐とか恨みを晴らすというより、明らかに熱心な追求ではないか。

しかし、この伊藤冬芽も不思議だ。

さっきから彼女と藤崎千明を観察し、二人がどんな関係なのか探っているようだった。

でも明らかに藤崎千明に興味がないような態度を取っているのに、興味がないなら何でこんなことを気にするのだろう?

「あなたのお兄さんが待ってるの」

「たった30分だけだよ」藤崎千明は泣きそうな顔で言った。「もう18回も断られたんだ、僕を哀れんでくれない?」

工藤みやびは少し考えて、「喫茶店はどこ?」と尋ねた。

「2階だよ」藤崎千明は喜色満面だった。

工藤みやび:「まずお兄さんに一言言ってくるわ、すぐに行くから」

「じゃあ彼女にも一言言ってくれないか、彼女は僕の言うことを信じないから」藤崎千明は伊藤冬芽を指さした。