第604章 彼のお義姉さん、なぜこんなに凄いのか?

藤崎千明は最初、義姉が映画を撮りたいと思ったのは、演技に飽きて、もう挑戦がないと感じたからだと思っていた。

だから、突然自分で監督をやりたいと思いついたのだろうと。

しかし、実際に撮影が始まると、彼はほとんど膝をつきそうになるほど驚いた。

彼女は各人の役割を非常に詳細に指示し、監督をしながら自分の役も演じ、現場を秩序正しくコントロールしていた。

以前の『長風』にしても、『追跡の眼』にしても、彼女は全力を発揮していなかった。

今、自分で監督をして初めて本当に羽を伸ばし、しょっちゅう坂口飛羽と熱演し、演技力のない彼をぶるぶる震えさせた。

彼の義姉は、どうしてこんなに凄いのだろう?

彼女はまだ19歳で、20歳にもなっていないのに、なぜこんなに天才なのか?

彼と同様に、震え上がっていたのは、本田葉子を演じる新人女優の小田澄玲だった。

工藤みやびと坂口飛羽が何シーンか演じるのを見た後、プレッシャーに押しつぶされそうになりながら、脇で台本を暗記して状態を整えていた。

しかし、予想通り、彼女の最初のシーンはNGになった。

「みやび姉さん……監督、私……」

小田澄玲は言いかけて気づいた。この女優はまだ19歳で、自分より1歳年下だった。

工藤みやびは彼女にすぐに2回目の撮影をさせず、スタッフに撮影を中断して休憩するよう指示し、自ら小田澄玲と二つのシーンを練習して、彼女の状態を調整した。

その後もNGを2回出したが、最終的なパフォーマンスは確かに彼女を失望させなかった。

初日の撮影が終わったのは、すでに深夜だった。

工藤みやびは藤崎雪哉の電話での催促を受けて、夕食を食べに行った。

そして、その日撮影した数シーンを確認し、不満な点があれば急いで再撮影できるよう、ロケ地を移動してからでは再撮影が難しくなる前に確認した。

藤崎千明は彼女が寝ていないのを見て、自分だけ寝る勇気はなく、彼女と一緒に撮影班に潜んでいた。

「でも、『命果てぬ夢2』は堀夏縁が心臓手術を受けたことを描いているようだけど、私たちの『微睡の淵』にも同じネタがあるよね。それって大丈夫なの?」

「何が問題なの?私に少しは自信を持ってくれない?」工藤みやびは笑いながら言った。

『命果てぬ夢』は温かい癒し系の路線で、『微睡の淵』はダークでサスペンス風のスタイルだ。