第603章 映画『微睡の淵』クランクイン

彼女自身は映画撮影の準備に忙しかったが、小分隊の3人は熱心に妊活のアドバイスをしてきた。

携帯で彼らをブロックすると、今度は千秋芸能の会社まで直接彼女を訪ねてきた。

さらに、藤崎千颯の行動力は高く、藤崎奥様はその日の夜に天水ヴィラまで栄養スープを持ってきた。

やっと映画の撮影が始まり、彼女が撮影クルーと帝都を離れてようやく少し静かになった。

新しい映画『微睡の淵』は簡素な開始式を行い、メディアさえ招待せずに正式に撮影を開始した。

『微睡の淵』はサスペンス・ミステリー映画で、女性作家の天野未桜が交通事故に遭い、肝臓と腎臓の移植手術を受けるストーリーだ。

手術が成功した後、徐々に天野未桜は奇妙な夢を見るようになり、夢の中には本田葉子という少女が現れる。

最初は夢の中だけだったが、やがて幻覚も見え始め、自分では決して行かないような場所に不思議と足を運ぶようになる。

ある日、天野未桜は夢の中で見た本田葉子という少女に実際に出会う。

葉子は少し名の知れた歌手で、天野未桜は夢と幻覚に悩まされていたため、葉子と知り合い親友になった。

しかし、彼女が葉子に自分の夢と幻覚について話した後、不思議と危険な目に遭うようになる。

時には住居の火災、時には外出先での交通事故、時には高所からの落下物など…

やがて、探偵の友人である小林百玖が不審な点を発見し、二人で一緒に調査を進めると、彼女が遭遇した危険な出来事はすべて知り合った葉子と関係があることが分かる。

二人が一歩一歩調査を進めると、葉子も彼女と同様に臓器移植手術を受けており、心臓を移植していたことが判明する。

そして葉子は本当の葉子ではなく、本田静香だった。

本当の葉子は彼女の双子の姉だった。

本当の葉子は明るく健康で、歌手としての才能もあり、歌唱コンテストに参加してデビューした。

しかし、病に苦しんでいた本田静香は、ついに自分の嫉妬心を抑えられなくなり、葉子を殺害し、葉子の死後、彼女の心臓を移植した。

葉子の他の臓器は寄付され、天野未桜は肝臓と腎臓を移植された。

天野未桜と小林百玖は警察に通報することを決めたが、そのとき天野未桜は突然気を失ってしまう。

目を覚ますと、彼女は精神病院にいた。

そして彼女の親友だった小林百玖は、彼女の主治医になっていた。