第606章 雅、君は間違いなく天才だ

『微睡の淵』の撮影は非常に順調に進んでいたが、藤崎雪哉の毎晩の定時電話チェックのせいで、夜の撮影が十二時を超えられないという問題があった。

そのため、進行は工藤みやびの当初の計画よりも少し遅れていた。

監督の仕事は全体を把握することであり、彼女は自分の演技をこなしながら、他の俳優たちの演技も指導しなければならなかった。

毎日、神経が高度に緊張した状態だった。

坂口飛羽は最初は信頼していなかったが、撮影に参加して二日後には『微睡の淵』の撮影に全力を注ぐようになった。

脚本家の千葉秀豊は常に現場に同行して撮影を見守り、さらに後半のいくつかのシーンの細部を完璧に調整していた。

また、以前に風蘭国の映画祭の前に彼女が直接訪問した有名な映画指導者モーフィル老先生も、約束通り日本にやって来た。

副監督が彼を連れてきたとき、工藤みやびは天野未桜と本田葉子の対面シーンを撮影中だった。

モーフィル氏は脇に立って撮影全体を見学し、彼らが撮影を終えて場所を移動する準備をするまで、工藤みやびは副監督の知らせで初めて彼の到着を知った。

「申し訳ありません、モーフィルさん、空港までお迎えに行けなくて。」

モーフィルは彼女を見て、そして彼女と演技を交わしたばかりの本田葉子役の小田澄玲を見て、少し不自然な日本語で言った。

「雅、君は間違いなく天才だ。」

「お褒めの言葉ありがとうございます。」工藤みやびは笑顔で彼と握手し、心から言った、「まだあなたの指導が必要です。」

「君は素晴らしい俳優であり、また場をよく支配できる監督でもある。」モーフィルは傍らの小田澄玲を見て、言った、「さっき彼女を状態に導いたやり方は非常に見事だった。」

本当に優れた俳優は自分の演技だけに気を配るのではなく、相手を引き立て、対戦相手を状態に導く方法を知っている。

さらに、シーン全体のリズムをコントロールすることも必要で、彼女はそのすべてを達成していた。

彼の目の前にいるこの若い女の子がまだ二十歳にもならないとは信じがたかった。

小田澄玲はそれを聞いて思わず頷いた。先ほどのシーンの撮影開始時は少し緊張していたが、荒木雅がセリフを言い始めると、その眼差しもオーラも瞬時に彼女を状態に引き込んでくれた。