藤崎雪哉は楽しげに低く笑いながら尋ねた。
「これは何の役に立つの?」
工藤みやびは目の前のスーツ姿で端正な身なりの男性を見て、目元に笑みを浮かべながら抱きついた。
「彼氏はとても貴重だから、もちろんキスしたり抱きしめたり愛でるためのものよ。そんな重労働をさせるわけにはいかないでしょ?」
藤崎雪哉は彼女の口ぶりから、自分で何とかする方法があるのだろうと思い、それ以上は詮索しなかった。
「じゃあ、藤崎夫人は仕事が終わったら迎えに行った方がいい?」
「お願い」工藤みやびは頷いた。
藤崎雪哉は彼女の唇に軽くキスをした。「じゃあ先に行くよ」
工藤みやびは彼が出て行ってから、急いで身支度を整え、服を着替えて千秋芸能へ向かった。
石橋林人は彼女がエレベーターから出てくるのを見るとすぐに駆け寄り、iPadを彼女に渡した。