橘座のシッポが虚空に焦げ跡を描き、量子化した体毛が燃えさかる星屑のように散る。林風は幼少期のキッチンの幻影床に倒れ、焦げた星の匂いが鼻を刺し、金穂霊の炎の悲鳴が鼓膜を破りそうだった。射手座A*の巨大BBQ台がマイクロブラックホールと化し、12本の炎の渦が銀河の腕を這い、星雲を料理形態に再構築していた。
「これは燃焼じゃねぇ…」橘座の瞳孔が量子クレバスに変形「宇宙の法則がレシピに書き換えられてる!」灰雀究極料理法典の文字が時空を喰らい尽くす。
林風が緑目の鍵に手を伸ばすと、柄から冷たい粘液が溢れ記憶の渦へ引きずり込まれる──
オリオン大星雲が分子スープと化し、恒星が油の玉跳ねる。カニ星雲はカラメルプリンに、パルサーは銀のフォークに。M87のブラックホールがスパゲティ状にねじれ、事象の地平面がケチャップ色に染まる。
「ペルセウス腕完全料理化!三体星系が冰糖葫芦に!」機械助手の声が泣きじゃくる。
青銅鍵を星図プロジェクターに挿すと、金穂霊のエントロピー値が表示──宇宙の熱的死が12万倍加速。林建国の亡霊が炎の中でレシピを踊り狂う。
「兄さん!」リンウーのクローンが培養槽から這い出し「私の遺伝子が炎と共鳴!」左腕を裂くと、BBQ台と同じ材質の量子骨が露出。
「小雨が料理の核にされた!」橘座がクローンの首筋から偽鍵を引き抜く。
虚空が裂け、ウーリーの意識が串先から滲み出す「サプライズ!妹のクローンは生きたコンロよ!」
記憶遡行機能で幼少期の幻影再現──6歳の林風が青い試薬を注入する父を見つめる。幼いリンウーが「パパ、光るケーキいや…」と泣く。
錆びたオーブンから林建国の声「本当の小雨は誘拐され…」無数のクローン培養槽が露呈。
金属箱【救済のレシピ】が現実に転移。橘座が解析「父の懺悔録…本当の小雨は赤ん坊時にすり替えられてた」
橘座の悲鳴が現実を引き裂く。金穂霊の炎が体を侵食し、九本のシッポが異次元と連結。
「朕の九つの命…九重宇宙の戦場に散った!」鍵から99本の量子ビームが平行世界を投影:
中世宇宙の聖騎士橘座が城塞をローストポークと戦い、サイバー宇宙が反物質心臓でデータ洪水に突入、修仙宇宙が天劫をケーキ型火球で爆破…
「エントロピー火災を止めるには…」全宇宙の橘座が声を揃える「全ての朕が消滅せねば!」
林風の指がボタン寸前で止まる。幻影の妹の笑顔とクローンのコードが重なり、突然鍵を自身の胸に突き刺す「償いはオレがする!」
遺伝子鎖が露出し金穂霊コードが蠢く。スーパーBBQ台の特異点に飛び込み、量子化した肉体が炎に溶ける「宇宙を燃やすなら…罪人の血を最後の燃料に!」
九十九体の橘座が共鳴し融合。聖剣と機械腕が交差し、混沌の大猫が銀河を巻き込み林風を救出。
「バカな人類…」猫神の涙が超新星となり「永遠に下僕として生きろ!」金穂霊火種を飲み込み、漆黒の体に第三の眼が開く。
光が消え、宇宙は琥珀色の星核を中心に再構築。月面に浮かぶ林風と橘座のレリーフ、鍵の緑目が新たな北極星に。
BBQ学院廃墟で蘇ったウーリーがニシン缶を拾う。表面に刻まれた第十次元座標「ゲーム…始まったばかり」
新生星核からリンウーの声「兄さん、混沌の海で待ってる」量子態が消え、星雲の矢印が宇宙外を指す。
火星猫カフェ跡で橘座が鍵を撫でる。穴から漂うニシン臭に金穂霊の残り火が混じる。欠けた耳に朝日が当たり「借りは返してもらうぞ…トイレ掃除係」