神崎弥香は振り向いて三神律を見た。彼は顔色が暗く、まばたきもせずに彼女を見つめていた。
彼女が立ち上がってバルコニーで電話を受けようとしたとき、三神律に椅子に押し戻された。彼は身をかがめて彼女を腕の中に閉じ込め、無言でここで電話に出るよう告げた。
神崎弥香は不満そうに彼を見つめ、三神律はまっすぐに彼女を見返し、少しも譲らなかった。
「弥香、聞いてる?」
神崎弥香はハッとして、スピーカーを切り、携帯を耳に当てて答えた。「はい、聞いてます。川辺さん、この時間に電話してきたのは何かあったんですか?」
神崎弥香は三神律が次にどんないたずらをするか分からなかったので、要点だけを話し、できるだけ早く電話を切りたかった。
「今日、月美が君に電話したことを正直に話してくれたんだ。彼女をきつく叱ったよ。明日改めて電話しようと思ったけど、彼女の言葉に影響されてるんじゃないかと心配で、我慢できずに電話してしまった。休んでるところ邪魔しちゃってないかい?」