「キャンセルしろと伝えろ!」三神律の低い声には明らかな不機嫌さが滲んでいた。
「三神社長、それでは、ご注文のお花はどうしましょうか?」
「捨てろ!」三神律は冷たく言い放つと、足早に会場へ戻っていった。
森本城一は遠くにいる神崎弥香と川辺遥真を見た。神崎弥香はすでに川辺遥真から離れ、二人の間には少し距離ができていた。
彼は少し離れた場所に立っていたため、二人が何を話しているのか聞こえなかったが、すぐに彼らは車で去っていった。
森本城一は眉をわずかに寄せた。三神律はどこをとっても素晴らしく、神崎弥香のことも非常に気にかけ、キャンドルライトディナーを用意したり花を買ったりしていたが、彼はどこか素直になれず、プライドと体面を捨てられなかった。
優しく思いやりのある男性を誰が拒めるだろうか。このままでは、神崎弥香はすぐに川辺遥真に奪われてしまうかもしれない。もっとも、こんなことを三神律に言う勇気は当然ながらなかった。