彼のキスはいつもと違っていた。怒りに満ちた激しさもなく、強引な押し付けもなく、情欲も混じっていなかった。ただ優しく切なく、抑制された思いやりがあり、数え切れないほどの思慕と愛情に満ちていた。
三神律の突然のキスに神崎弥香は頭が真っ白になり、瞳孔が縮み、一瞬で呼吸が乱れた。
神崎弥香が慌てていると、廊下の奥からかすかに足音が聞こえてきた。彼女は反射的に彼を押しのけ、小声で言った。「誰か来たわ、早く隠れて」
三神律は目を細め、口角を少し上げた。まるで彼女を臆病者だと笑っているようだった。
神崎弥香は彼が誤解されたり噂されたりするのを心配していたのに、彼はまったく感謝の気持ちを示さなかった。彼女が口をとがらせ、彼を批判する前に、三神律は彼女を再び腕の中に引き寄せた。
彼は彼女の細い腰に手を添え、キスをしながら彼女を後ろのトイレに連れて行き、ドアを閉めた。
廊下の足音がどんどん近づいてくる中、神崎弥香は三神律に一歩迫られ、壁の隅に追いつめられた。彼の力強い手が彼女の後頭部を押さえ、逃げ場を失わせた。
彼女が眉をひそめて何か言おうとした瞬間、彼はその隙に彼女の歯の間に入り込み、冷たい舌が彼女の口の中に滑り込んだ。彼のキスが細かく降り注ぎ、熱い息が彼女を包み込んだ。
神崎弥香は突然、彼の体から漂う見覚えのある香料の匂いに気づき、背筋がゾクッとした。彼を押しのけ、目をしっかりと彼に向けて確認した。「あなたが使っている香料は、私がコンテストで作ったものでしょ?」
三神律はうなずいた。「あの時、君が作った香りを保管していたんだ。僕たちが離れていた間、君が作った香料の匂いを嗅いでないと眠れなかった。君が僕に残してくれた形見のようなものだよ」
彼は優しく彼女を見つめ、手を上げて彼女の頬に触れた。まるで非常に貴重で壊れやすい宝物を扱うように、目に愛おしさを浮かべて尋ねた。「君の顔はやせて別人のようだ。僕たちが離れていた間、ちゃんと食事も睡眠も取れなかったんだろう?君も僕のことを気にかけていたんだね。後悔したこともあるだろう?」
神崎弥香は彼の目の奥に溶け込めないほど濃い愛情を見て、鼻がツンとし、心の中に言葉にできない感情が湧き上がってきた。