第163章 もう離れないで!

神崎弥香は喉が詰まり、その場に立ち尽くし、長い間言葉が出なかった。彼女はキャリーケースをきつく握りしめ、罪悪感で深く頭を下げた。

三神律は彼女を見つめ、その深い瞳の奥には複雑な感情が渦巻いていた。

切符売り場の係員が再び彼女を急かすまで、神崎弥香はようやく我に返った。彼女は心の中で、三神律がその場に立ち止まって黙っているのは、彼女の選択を待っているのだと理解していた。

彼女が残ることを選んでも去ることを選んでも、彼は彼女についていくだろう。そうであれば、彼女には去る必要はないのだ。

彼女はゆっくりと三神律に近づいた。三神律は頭の中に湧き上がった無数の思いをすべて押し殺し、手を伸ばして彼女の荷物を受け取り、厳しい表情で引き返した。二人は道中、お互いに言葉を交わさないという暗黙の了解があった。