三神律の目には、今まさに銃を構えて彼を狙っている三神景元の姿は見えていなかった。彼の目には神崎弥香しか映っていなかった。神崎弥香のこの様子を見て、彼の目は瞬く間に凍りつき、彼から発せられる殺気が一瞬にして部屋全体の温度を数度下げた。
彼は自分の感情を抑え、神崎弥香に向かって口角を上げ、顔に明るい笑顔を浮かべた。彼の声は優しくも確信に満ちていた。「弥香、怖がらないで。僕が助けに来たよ。」
神崎弥香は彼を見て、涙でいっぱいの小さな顔を必死に振った。彼女の口からはわずかな声も出せず、ただ泣き続けるしかなかった。彼女は三神景元の目的を知っていた。彼女は三神律に近づかないよう合図した。
三神律がどうして三神景元の考えを知らないはずがあるだろうか。彼は心の中で、三神景元がすでに窮地に追い込まれていることを理解していた。三神景元は以前から彼を憎んでいた。彼がここに来たのは、おそらく生きて帰れないことを覚悟してのことだった。
もし彼が警察と一緒に来ていたら、三神景元に気づかれて、すぐに人質を殺されていたかもしれない。警察も彼が一人で上がることを許さなかっただろう。神崎弥香がいる以上、彼は賭けることができなかった。
彼は自分自身だけを信じていた。彼がここにいる限り、必ず全力を尽くして彼の弥香を守り抜くつもりだった。
彼は目を固く見開き、顔に笑みを浮かべながら、神崎弥香がいる方向へ大股で素早く歩いていった。しかし、彼がそれほど遠くまで行かないうちに、バンという鋭い銃声が倉庫内に響き渡った。三神律は遠くで笑みを浮かべている三神景元を見つめながら、まっすぐに片膝を地面につけた。
三神律の左脚に弾丸が命中し、真っ赤な血が次々と噴き出してきた。神崎弥香の瞳孔は瞬時に開き、彼女は全身を震わせ、必死に体の拘束を振り解こうとした。しかし、どれだけ力を入れても、彼女の体を縛る縄はきつく結ばれており、少しも動くことができなかった。
三神律は一言も発せず、彼の顔にはまだ笑みが浮かんでいた。彼は苦しみながら立ち上がり、神崎弥香がいる方向へゆっくりと進み続けた。彼が通った地面には血の跡が残っていた。
神崎弥香は三神律が傷ついているのを見ながらも何もできず、ただ必死に泣きながら頭を振り、三神律にこれ以上近づかないよう合図するしかなかった。