三神律は彼女にいつも気を配っていたので、神崎弥香は彼が自分を待っていると思うだろうと察して、わざわざ夜食を届けに人を寄越したのだと思った。
今はもう厳冬の時期で、外は雪景色。神崎弥香は玄関に置いてあるルームキーを手に取り、分厚いダウンジャケットを羽織り、スリッパを履いて慌ただしく外に出た。
エレベーターに乗って1階のボタンを押した後で、携帯を忘れたことに気づいたが、すでにエレベーターは下降を始めていたので、そのままにした。
彼女が階下に着くと、案の定、一人の男がビルの入り口に立っていた。神崎弥香は彼を観察した。全身をしっかりと包み、背は高くなく、レザージャケットにジーンズ姿で、顔には帽子とマスクをつけ、目だけが露出していた。神崎弥香は彼が両手に何も持っていないことに気づいた。