三神律はすぐに顔を曇らせた。彼は望月文臣が神崎弥香に対して抱いている気持ちをずっと知っていたので、彼は再三弥香に彼から離れるように言い聞かせていた。しかし弥香は彼の言うことを聞かなかった。彼女は彼から離れるどころか、彼と一緒に臨江楼に食事に行き、さらにそのことで彼に嘘までついた。
彼は神崎弥香を信頼していた。彼女が望月文臣の食事の誘いを受けたのは、考えるまでもなく望月文臣が彼女に情報を提供してくれるからだということを彼は知っていた。彼女がそうしたのは全て彼を助けるためだった。
深い挫折感が彼を包み込んだ。彼は突然自分が役立たずだと感じた。今の彼は彼女を守ることができないだけでなく、彼女に多くの面倒をかけていた。
電話の向こうの森本城一は、三神律がずっと黙っているのを見て、おそるおそる再び尋ねた。「三神社長、私は中に入った方がいいですか?」