第125章 根岸さん、私はそんなにあなたの目に入らないのですか

高橋優奈は驚いて口を大きく開けた。なるほど、あの後ろ姿が見覚えがあると思ったのは——

なんと……桜井昌也だったのだ!

綾瀬光秀の特別補佐官である桜井昌也には、一体どんな優れた点があるのだろう?

横浜の宝飾界の重鎮である根岸家の根岸様が、孫娘の婿候補として選ぶほどとは。

……

根岸詩音は桜井昌也の向かいに座り、明らかに心ここにあらずといった様子だった。

男は眉を上げ、彼女の上の空な様子を見て、唇の端に意味ありげな笑みを浮かべた。「根岸さん、私はそんなにお気に召さないのですか?」

根岸詩音は顔を上げ、申し訳なさそうに微笑んだ。「すみません桜井様、私が無礼でした」

彼は何気なく口を開いた。「謝る必要はありませんよ。根岸さん、さっきは何を考えていたのですか?」

「私が考えていたのは、横浜では桜井様が多くの女性と交際されたと噂されていて、上流社会ではそれが有名なのに、どうして見合いという手段で伴侶を探す必要があるのかということです」