第143章 その言い訳をもう20年近く使っている

綾瀬光秀の頭脳からすれば、当然高橋優奈のでたらめな言い訳など信じるはずがなかった。

彼女がお粥を作るために使った炊飯器からの蒸気が、彼女に当たるはずがない。

仮に普通の鍋で煮ていたとしても、彼女がバカみたいにそこに立って半時間も蒸気を浴び続けるだろうか?!

彼女は少し抜けているように見えるが、知的障害とは...まだ少し距離がある。

しかし男は彼女をこれ以上からかうことなく、直接席に着いて食事を始めた。

……

食事の後、高橋優奈はタクシーで横浜北郊刑務所へ向かった。

彼女はしばらく座って待っていると、養父の高橋牧が誰かに連れられてやってきた...彼のこめかみの白髪はさらに増え、顔のしわも深くなっていた。

一ヶ月も経っていないのに、彼は...ずいぶん老けたように見えた。

高橋優奈が彼の向かいに座った時、思わず胸が痛くなり、涙がこぼれ落ちた。