第184章 泣く必要があるのか

雪村悦子は興奮して話していたが、綾瀬光秀からは何の反応も得られなかった。

男は車の運転に集中しているだけで、彼女の話に応じることもなかった。

雪村悦子は彼が何を考えているのか読み取れず、完全に黙り込んだ。

……

湾岸レジデンス。

高橋優奈は袋からイブニングドレスの入った箱を取り出した。箱はリボンで結ばれており、彼女はそれを解いた。

淡いブルーの生地が中に静かに横たわっていて、とても仙人のように美しく見え、薄いシフォンは触り心地も極めて良かった。

彼女が着てみると、サイズなども丁度ぴったりだった。

高橋優奈は鏡の前で一回りして見た後、整えてからクローゼットを出て、携帯を手に取り藤原羽美に電話をかけた。

相手はすぐに電話に出た。

「羽美、あなたが送ってくれたドレスとても素敵よ、ありがとう」