第310章 昨日横浜中央病院には奥様という患者はいなかった

男は言い終わると電話を切った。

携帯を置くと、綾瀬光秀は目を上げて二階の客室の方向をちらりと見た。その目は一瞬細められた。

彼は階下に長居せず、すぐに階段を上がって書斎に入った。

……

高橋優奈は客室に入ると、すぐにベッドで寝るのではなく、携帯を手に取って高橋優奈に電話をかけた。

相手はすぐに出た。「優奈、家に着いた?」

「うん、会社に行ったの?」

「今着くところ」根岸詩音は言葉を終えるとすぐに続けて尋ねた。「あのクズ旦那、何か聞いてきた?」

「いろいろ聞かれたわ。最後には昨日起きたことを全部話したの、妊娠のことを除いて」

それを聞いて、根岸詩音の方は一秒ほど黙り、それから声が再び伝わってきた。「彼は何て言ったの?」

高橋優奈は一言一句、根岸詩音に説明した。「病院に行ったことも話したから、話し終わった後、綾瀬さんは私を心配してか、どこの病院に行ったのか聞いてきたの。私は正直に答えたわ」