第371章 綾瀬奥さん、私もはっきりとあなたに伝えておく

男が言い終わった後、高橋優奈は真剣に考えた。

彼の言うことには少し道理がある。

しかし……根岸詩音にとっては、そうではない。

根岸と氷室両家の婚約パーティーがどれほど盛大だったか、ホテルを出るときに遭遇した大勢の記者だけでも判断できる。

婚約パーティーの前から、彼女は根岸詩音とこの件の重要性について話し合っていた。

一度問題が起これば、非難を浴びることになる。

そして今、やはり問題が起きてしまった。

高橋優奈は綾瀬光秀を見つめ、唇を引き締めてから彼に言い返した。「綾瀬さん、あなたがそう言うのは自分の罪を逃れようとしているだけです。この件で一番責められるべき人が氷室陽介だということはわかっています。でもあなたも悪事に加担した一人です」

男は彼女を見つめ、尋ねた。「つまり、綾瀬奥さんは最終的に私に有罪判決を下すんですね?」

彼女はストレートに四文字を言い放った。「事実ですから」

綾瀬光秀は軽く笑い、眉目に諦めの色が浮かび、彼女に尋ねた。「では……どうやって罪を償えばいいと思う?」

高橋優奈は体の横に置いた手を軽く握りしめた。彼がこう言うのを待っていたのだ。そして自分の要求を出す。

女性はまず彼の表情を観察してから、歯を食いしばって言った。「詩音のために今回の危機を解決してくれませんか?」

「航平の方がそういうことをするのを喜ぶだろう」

綾瀬光秀の返答は素早かった。まるで彼女がこんな質問をすることを予想していたかのようだった。

高橋優奈の握っていた手はすぐに緩み、わずかな緊張感も消え去り、綾瀬光秀を見つめて言った。「さっき詩音を根岸邸に送るとき、車の中で話し合ったんです。この件は河合さんに助けてもらうべきではないって」

男は唇を歪め、笑いながら言った。「じゃあ、どうして私が助けていいんだ?」

「河合さんに助けてもらうにしても、他の独身男性に助けてもらうにしても、詩音は良くない噂を立てられます。あれは婚約パーティーで、女性と男性が一生を誓う場面だったんですから。でも綾瀬さんは結婚していますから、あなたが彼女を助けても、誰も陰口を叩きません」

高橋優奈の言葉が終わると、綾瀬光秀は彼女をしばらく見つめた。

おそらく綾瀬奥さんの思考がとても明晰だと感じたのだろう。