第376章 雪村郁美は何を送ったの、私の綾瀬奥さん、読んでくれる?

桜井昌也は根岸詩音を見つめ、その表情にようやく少し変化が現れた。

彼は意味深げに頷き、彼女の顔に視線を固定させた。「根岸さん、申し訳ありません。あなたの婚約パーティーが台無しになった時、私は海外出張中で、何も手助けできませんでした。しかし今なら……もし氷室陽介があなたを困らせるようなことがあれば、私が力になれます。」

根岸詩音は少し笑い、桜井昌也を穏やかな目で見つめた。「桜井様は横浜の隠れた富豪だと聞いています。こんなに長い間知り合いなのに、桜井様がどれほどの富豪なのか、まだ知らないんですね。」

男性は眉を少し上げた。「根岸さんは私に興味があるということですか?」

「桜井様が好奇心と言ってくださるなら、そのほうが嬉しいです。」

桜井昌也は真剣な様子で頷き、足を組んで、指で膝をリズミカルに叩いた。「そうですね、世間では私の富は『隠れている』と言われていますから、基本的には無視できるレベルですが、根岸さんご安心ください。根岸家が必要とする助けが資金であれ人脈であれ、あなたの前に座っている男には、その力があります。」

根岸詩音は頷いた。「わかりました。ありがとう、桜井様。でも私は誰の助けも求めるつもりはありません。」

桜井昌也の表情がついに曇った。軽く笑いながら言った。「根岸さん、私はほぼ飛行機を降りてすぐにあなたを訪ねてきたんですよ。こんなに急いだのもあなたを心配して、少しでも力になりたいと思ったからです。それなのに、そんなに簡単に断られてしまうんですか?」

「私には理由もなく人の恩恵を受ける理由がありません。」

「私の考えが根岸さんにはわからないのですか?それとも……私のこの好意だけでは、根岸さんにとって薄すぎて、私の助けを受け入れるには不十分だということでしょうか?」

彼女は首を振った。「桜井様、あなたの気持ちはありがたく受け取りました。そして率直に言わせていただきますが、婚約パーティーの一件で、世間の私への評判は既に悪くなっています。もし今、あなたのような独身の紳士からの助けを受けるとなれば、たとえ嘘であっても、真実のように噂されてしまうでしょう。私は根岸家を守らなければなりません。その名誉と評判も含めて。自分の個人的な問題で、会社までダメージを受けるわけにはいきません。」