桜井昌也は根岸詩音を見つめ、その表情にようやく少し変化が現れた。
彼は意味深げに頷き、彼女の顔に視線を固定させた。「根岸さん、申し訳ありません。あなたの婚約パーティーが台無しになった時、私は海外出張中で、何も手助けできませんでした。しかし今なら……もし氷室陽介があなたを困らせるようなことがあれば、私が力になれます。」
根岸詩音は少し笑い、桜井昌也を穏やかな目で見つめた。「桜井様は横浜の隠れた富豪だと聞いています。こんなに長い間知り合いなのに、桜井様がどれほどの富豪なのか、まだ知らないんですね。」
男性は眉を少し上げた。「根岸さんは私に興味があるということですか?」
「桜井様が好奇心と言ってくださるなら、そのほうが嬉しいです。」
桜井昌也は真剣な様子で頷き、足を組んで、指で膝をリズミカルに叩いた。「そうですね、世間では私の富は『隠れている』と言われていますから、基本的には無視できるレベルですが、根岸さんご安心ください。根岸家が必要とする助けが資金であれ人脈であれ、あなたの前に座っている男には、その力があります。」