第27章 じゃあ何も履かなくていい

彼女は着たばかりのスーツに触れ、少し力を入れると、水が絞り出された。

着たばかりなのに、どうしてこんなに水が？

林知恵は振り返って宮本深を見た。彼の左半身は完全に濡れていて、シャツが体に張り付き、人を魅了する線を描き出していた。

どうしたの？

車で移動する間、宮本深は運転手に暖房を最大にするよう指示し、後部座席のスクリーンを指で二回タップした。

元々体が冷えていた林知恵は、あらゆる方向から暖かさが流れ込み、お尻の下までポカポカと感じた。

彼女は頭を下げたまま、宮本深の意図がまったく理解できなかった。

結局、あちこち回って、彼女はやはり宮本深に以前のアパートに連れて行かれた。

「シャワーを浴びなさい」宮本深はクローゼットから女性用のスリッパを取り出して林知恵に渡した。

林知恵はそれを一目見て、すぐに折木和秋のアパートにある宮本深の日用品を思い出した。

これは間違いなく折木和秋のスリッパだ。

「履きません」

林知恵は裸足で中に入り、冷たい床のせいでつま先立ちで歩きたいほどだった。

宮本深は彼女がつま先立ちで歩く姿を見て、眉を少し上げたが、何も言わなかった。

林知恵はバスルームに逃げ込み、激しくくしゃみを二回した後、ようやく落ち着いた。

この後まだ試合があることを考えると、彼女は重要な時に病気になるわけにはいかなかったので、急いで熱いシャワーを浴びた。

シャワーを終えると、タオルもバスローブも服も何もないことに気づいた。

彼女は裸のまま、その場に数秒間呆然と立っていた。

濡れた服を着直すなら、シャワーを浴びた意味がないし、寒暖の急激な変化はさらに病気になりやすい。

林知恵は目を上げてバスルームのドアを見つめ、不本意ながら声を上げた。「おじさま」

「……」

誰も答えない。

「おじさま！」彼女はさらに声を大きくした。

「……」

それでも誰も答えなかった。

彼女は宮本深がわざとやっていると疑った！

林知恵は洗面台の上の携帯電話に気づき、迷った末に宮本深に電話をかけた。

「ん？電話をかけたくないんじゃなかったのか？」

彼の声は低くかすれていて、何気なく挑発するような感じがあった。

林知恵は葛藤し、曖昧に変調した言葉を発した。「な…ゆ…もう…」

「何だって？」宮本深は面白そうに眉を上げた。

「バ…バスタオルがない」