林知恵はうっとりとした折木和秋をちらりと見て、少し恍惚としていた。
しかし、学長や他の人たちが既に散会したので、この杯を最後の一杯として飲み干し、何か言い訳をつけて帰ろうと思った。
面子も保てるし、どうせ二日酔い防止の薬を飲んでいるから、小さな一杯くらいなら問題ないだろう。
彼女がグラスを受け取って飲もうとしたとき、背後のドアが開いた。
宮本深が冷気を纏って入ってきた途端、三人の表情は一気に引き締まった。
その中の一人が取り入るように言った。「三男様、唇が切れていますが、大丈夫ですか?」
宮本深は手を上げて触れながら、意味ありげに言った。「噛まれたんだ」
林知恵はそれを聞いて、頬が赤く染まった。
三人は彼が自分で誤って噛んでしまったのだと思い、気にせず頬杖をついている折木和秋を指さした。