林知恵は案内板に沿って個室へと向かった。
原田さんが彼女を支えながら、周囲を確認した。「林さん、支配人が協力しなかったらどうしますか?」
次の瞬間、林知恵は個室の前で立ち止まり、顔に決意の色が浮かんだ。
「今日は協力しようがしまいが、絶対に協力させるわ!」
そう言うと、彼女はホテルの避難警報器のところまで行き、力強く押した。
たちまちホテル中に警報音が鳴り響き、全員が外へ向かって走り出した。
林知恵と原田さんは逆に中へと探しに向かった。
しかし、一番奥の個室まで探しても何の痕跡も見つからず、顔見知りの人も一人も見かけなかった。
「林さん、やはり見つかりません。」
林知恵の手のひらは汗で濡れ、体にも力が入らなくなっていた。
彼女の生まれ変わりでも、山下穂子と宮本石彦の事故を変えることはできないのだろうか?
焦りに胸を焼かれているとき、一人のウェイターがドアから飛び出してきた。
林知恵は手を伸ばして彼女を引き止め、ドアを指さして尋ねた。「中は何があるの?」
「厨房につながっていて、私たち従業員が料理を運びやすくするための場所です。」
林知恵は何かを思いついたように、足の痛みも気にせず中に飛び込んだ。
しかし、またしても失望させられた。厨房は見渡せる限り開けており、隠れる場所など全くなかった。
角にある目立たないドアの向こうから、すすり泣く声が聞こえてくるまでは。
林知恵は急いで前に進み、ドアに貼られた「ゴミ置き場」という三文字を発見した。
ゴミ置き場!
ゴミ置き場!
怒りが込み上げ、林知恵は力いっぱいドアを引っ張ったが、どうしても開かなかった。
結局、原田さんが蹴りを入れて鍵を壊してようやくドアが開いた。
途端、悪臭が押し寄せてきた。
ホテル全体の厨房ゴミがそこにあった。
宮本石彦は何日も前から腐った食べ物の上に倒れていた。
山下穂子は手足を縛られ、宮本石彦の隣に伏せていて、全身が腐敗した厨房ゴミで覆われていた。
口には固いまんじゅうが詰め込まれていた。
普段は清潔さと美しさを何より大切にしていた彼女が、こんなにも惨めな姿になるのは初めてだった。顔中が汚れ、目には恐怖からくる涙と血走った目が見えた。
林知恵を見るなり、彼女はうめき声を上げながら地面に倒れている宮本石彦を見つめ、必死に体を使って彼を押していた。