第55章 脅迫

林知恵は案内板に沿って個室へと向かった。

原田さんが彼女を支えながら、周囲を確認した。「林さん、支配人が協力しなかったらどうしますか?」

次の瞬間、林知恵は個室の前で立ち止まり、顔に決意の色が浮かんだ。

「今日は協力しようがしまいが、絶対に協力させるわ!」

そう言うと、彼女はホテルの避難警報器のところまで行き、力強く押した。

たちまちホテル中に警報音が鳴り響き、全員が外へ向かって走り出した。

林知恵と原田さんは逆に中へと探しに向かった。

しかし、一番奥の個室まで探しても何の痕跡も見つからず、顔見知りの人も一人も見かけなかった。

「林さん、やはり見つかりません。」

林知恵の手のひらは汗で濡れ、体にも力が入らなくなっていた。

彼女の生まれ変わりでも、山下穂子と宮本石彦の事故を変えることはできないのだろうか?