第70章 局面を逆転させる

田中慎治は木村悦子のオフィスで静かにお茶を飲んでいる宮本深を見つけた。

「三男様、林さんは長男様に連れて行かれました。」

宮本深は目を細め、携帯を取り出して林知恵に電話をかけた。

電源が切れていた。

機械的な音声とともに、宮本深の手の中で茶碗が割れた。

彼の目に暗い波が走り、背筋が凍るような雰囲気だった。

木村悦子は彼をちらりと見た。「焦っているの?なら、なぜさっき彼女を追い詰めたの?」

宮本深は割れた茶碗をゴミ箱に投げ入れ、説明する気はなかった。

木村悦子はテーブルの上に畳まれたセーターを指さした。「このセーターまで彼女に着せるなんて、これはあなたの...」

「暇なの?」

宮本深は遮り、セーターを手に取って立ち去った。

宮本家に戻ったときには、すでに遅い時間だった。

宮本深は庭に立ち、一人でタバコに火をつけた。