第73章 奇妙な同僚

折木和秋は宮本深がこの光景を見れば、軽薄な林知恵を嫌悪するだろうと思っていた。

しかし彼は表情を変えることなく、長い指を額に当て、もう一方の手で冷淡に膝の上の書類をめくった。

「君が私を呼んだのは、この芝居を見せるためか?」

低い声には冷たさが滲み、まるで目の前にいるのは婚約者ではなく、仕事のできない部下であるかのようだった。

折木和秋は拳を握り、内側の唇をかみ締めていたが、反論する勇気はなかった。

そのとき、彼女はバックミラーを通して後ろにいる林知恵を見て、目を見開いた。

林知恵は実に……

宮本深が顔を上げようとするのを見て、折木和秋はすぐに手を伸ばして彼を引き留めた。

「三男様、お会いしたかったのは椿山荘の天田社長のことです。」

「最近あなたが彼女と提携の話をしていると聞きました。ちょうど私たちのスタジオも彼女と取引があるので、もし私を連れて行ってくださったら、必ず彼女が満足するデザインを提出します。そうすれば、あなたたちの提携も促進できるでしょう。」

「天田社長は気難しいことで有名です。雪村長は前後して三回も飛行機で訪ねましたが、いつも難癖をつけられました。でも私は怖くありません。最近あなたを怒らせてしまったことがあるので、少しでも埋め合わせができればと思っています。」

「三男様、どうか私を信じてください。」

折木和秋は真剣な眼差しで宮本深を見つめ、ゆっくりと彼の手の甲に手を這わせ、優しく撫でた。

宮本深は気づかれないように自分の手を引き、書類を閉じ、感情を表さずに彼女を見た。「ああ。」

肯定の返事を得て、折木和秋は表面上は優しく微笑んだが、内心では喜びが湧き上がっていた。

宮本深を後ろ盾にすれば、どんな天田社長でも彼女のデザインを認めざるを得ないだろう。

林知恵はスタジオで足場を固めることなどできない!

そう考えながら、折木和秋は唇を曲げ、携帯を取り出してこっそりメッセージを送った。

車が発進した。

宮本深は顔を上げてタバコに火をつけ、タバコを挟んだ手を半開きの窓から出し、煙は風に散っていった。

白い煙の中、林知恵の男性同僚の車が去っていき、後部窓からは長い髪の女性が隣の男性に抱き寄せられて戯れる姿が見えた。

異性との縁が良いのか?

それはそれで結構なことだ。