宮本康弘の秘書は自分の膝裏が何かに打たれたような感覚がして、バランスを崩し、手に持っていたお茶が全て宮本康弘の上と食事の入った箱に零れてしまった。
宮本康弘は眉をしかめた。
秘書は慌てて言った。「申し訳ありません、若様、故意ではなかったのです。」
その時、宮本深はタバコの吸い殻を灰皿に押し付けた。
「海城に出張してもらうために呼んだんだ。書類はここに置いておく、必ず目を通しておけ。」
宮本康弘はデスクに置かれた書類をちらりと見て「わかりました」と答えた。
「行くぞ」
宮本深は振り返りもせずに出て行った。
オフィス内で、宮本康弘は秘書の手からハンカチを取り、表情は相変わらず穏やかだった。
「出て行って出張の準備をしなさい」
「はい」
秘書は立ち上がってオフィスを出た。