天田社長は部屋を捜索する話になると、わざと折木和秋を見つめた。
「折木さん、異議はないでしょうね?」
その言葉に、折木和秋の表情に一瞬の違和感が走った。
「天田社長、誤解は解けたのですから、もういいのではないでしょうか。そうでなければ、あなたと三男様の時間の無駄になります」
天田社長は口元を押さえて軽く笑った。「折木さんはとても気遣いがありますね。どうして時間の無駄になるでしょうか?あなたたち、何をぼんやりしているの?早く折木さんの部屋を捜索しなさい」
「はい」
執事が人を連れて出ようとしたが、折木和秋が急いで道を塞いだ。
「天田社長、これは私と三男様の寝室ですよ。それはあまり適切ではないのでは?」彼女は注意した。
「折木さん、それはダブルスタンダードですね。林さんは独身女性で寝ていたのに、あなたはこんなに多くの男性を連れて突入したとき、彼女は何も言わなかった。あなたは何を恐れているの?何か隠しているのではないですか?」天田社長は意味ありげに言った。
「いいえ!違います!」
折木和秋は首を振ったが、顔色はますます悪くなった。
彼女は何も隠してはいなかったが、彼女の部屋はあまりにも清潔で、男女が過ごした形跡がまったくなかった。
もし宮本深が昨夜彼女と一緒に寝ていなかったことが他人に知られたら。
彼女の顔はどこに置けばいいのだろう?
しかし天田社長は彼女に抵抗する機会を与えず、執事に目配せした。
執事は折木和秋を押しのけて隣の部屋へ向かい、他の人々も続いた。
林知恵は行きたくなかったので、座ったままだった。
昨日、折木和秋と宮本深は部屋に入るとすぐに我慢できなくなり、壁をドンドン鳴らしていた。
戦場がどのようなものだったか想像できる。
しかし田中悦子は彼女を引っ張って外に連れ出した。「どうしてまだ座っているの?早く!」
林知恵は不本意ながら隣の部屋に引きずられ、小声で田中悦子に忠告した。「見ない方がいいよ、目に毒だから」
「あっ」田中悦子は思わず小さく叫んだ。
ほら、見るなと言ったのに。
田中悦子は声を抑えて言った。「この部屋、きれいすぎない?三男様と折木和秋が…」
え?
林知恵は疑わしげに目を上げ、部屋が異常なほど清潔であることに気づいた。