第125章 抱っこする?

度数が千以上?

そんなはずがない!

木村悦子と折木和秋が一緒にいた時、彼らはプロのレーシングチームのロゴが入った革のジャケットを着ていた。

視力が千以上も悪い人がプロのレーサーになるなんて絶対に不可能だ。

林知恵はしばらく真偽を判断できなかった。木村悦子の目くらましなのだろうか?

彼女は数秒間考え込んでから目を上げて木村悦子を見た。ちょうど彼が横を向いてレントゲンを見ていたので、別の角度からレンズをはっきりと見ることができた。

レンズを通して見ると、林知恵は目が回るような感覚を覚えた。

木村悦子がそんな演技をするとは考えにくい。

それに、宮本深は彼が眼鏡をかけていることに驚いていなかった。つまり、彼は本当に近視なのだ。

木村悦子はレントゲンに集中して見ながら、手を上げてある部分を指さして言った。「ここを見て、骨には損傷がないから大きな問題はないよ。ただ、この数日は歩き方がちょっと不自然になるだけだ」

林知恵はそれに従って見ると、ちょうど彼の手首が目に入った。とても清潔で、時計を着けた形跡が全くなかった。

しかし彼女は山下穂子が言っていたことをはっきりと覚えていた。松本香奈は一定期間ごとに好きな相手のために時計をオーダーメイドしているということを。

好きな人に気に入られようとするなら、必ずその人が好きなものを贈るはずだ。

木村悦子が本当に時計が好きなら、きっと一年中身につけているはずで、手首には必然的に跡が残るはずだ。

林知恵はあれこれ考えた末、試してみることにした。彼女は車椅子を回して木村悦子に近づいた。

木村悦子は振り向いて自分に近づいてきた林知恵を見てびっくりし、椅子から飛び上がりそうになった。

「なんで急にそんなに近づくんだ?」

「木村先生の手首がとても綺麗だと気づいたの。時計をつけるのにぴったりね」

そう言いながら、林知恵は手を伸ばして木村悦子の手首に触れようとした。彼が何か塗っているかどうか確かめるためだ。

しかし彼女の手が木村悦子に触れる前に、車椅子が引き戻された。

彼女はすぐに振り返り、さっきまでお茶を飲んでいた宮本深がいつの間にか彼女の車椅子の後ろに立ち、片手でハンドルを握っているのを発見した。

彼女は力を込めて車椅子を動かそうとしたが、全く回らず、唇を噛んで諦めるしかなかった。