木村悦子は以前と同じように、医者でありながらも、口を開けば漫才をしているようだった。
声のトーンはいつも上向きで、常に活力と希望に満ちた様子を見せていた。
折木和秋と互いに貪り合っていた狂気の姿とは別人のようだった。
林知恵が彼の偽装を見抜いていなければ、彼女も大多数の人と同じように木村悦子と友達になれば楽しいだろうと思っていただろう。
彼女でさえ一時は、前世で木村悦子が犯した数々の罪は宮本深に強制されたものかもしれないと思っていた。
しかし今となっては、彼はすべて自ら進んで行ったのだと分かる。
彼が星奈の手術をした時、最初から星奈を生かすつもりはなかった。
確かに、あの頃の林知恵と宮本深を繋ぐ唯一の絆は子供だった。
子供のために、宮本深のような人物は妻子を捨てることができず、一方では折木和秋親子の立場の悪さを気にしながら、もう一方では彼女たち母娘を排除する方法を必死に考えていた。