一時間後、林知恵はスタジオに入ったところで、同僚から雪村真理が彼女を探していると言われた。
彼女はすぐに向きを変え、雪村真理のオフィスのドアをノックした。
その時、雪村真理はクライアントと話していた。
彼女が入ってくるのを見て、微笑んだ。「知恵、クライアントがあなたのコンテストの作品を見て、彼のジュエリーをあなたにデザインしてほしいと言っているわ。」
林知恵は突然の幸運に戸惑い、少し途方に暮れた。
我に返り、彼女は急いで自分に背を向けている男性を見た。
これは彼女が初めて男性のためにジュエリーをデザインする機会であり、一種の挑戦でもあった。
男性が振り向いた時、林知恵は笑顔を作れなくなった。
田中広志だった。
「知恵、また会ったね。」
クライアントである以上、林知恵も笑顔を浮かべるしかなかった。「こんにちは、田中社長。」