それから二日後、林知恵がデザインしたブローチの台座が完成し、あとはブルーサファイアの装着だけとなった。
雪村真理はわざわざ立ち会いに来ていた。
しかし予想外のことが起きた。
パキッという音と共に、ブルーサファイアが割れてしまったのだ。
部屋は静まり返り、職人は額に冷や汗を浮かべて驚いていた。
「い、いや、私ではありません。力を入れていませんでした」
雪村真理は我に返り、半分に割れたブルーサファイアを手に取って確認すると、魂が抜けたように全身の力が抜けた。
林知恵は彼女を支えながらその半分のブルーサファイアを受け取り、詳しく鑑定した後、自分も呆然とした。
「おかしい、これは受け取ったブルーサファイアではない」
雪村真理はすぐに監視カメラの映像を確認した。
結果、この二日間、入庫以外に誰も倉庫に入っていなかった。
雪村真理は椅子に崩れ落ち、両手で頭を抱えた。「どうしてこんなことに?一体どこで間違えたの?」
林知恵も不安だったが、今は恐れているだけでは何の解決にもならなかった。
彼女が今唯一確信していたのは、あの日の鑑定に問題がなかったということだ。
そう考えていると、偶然にも田中広志から電話がかかってきた。
二人は顔を見合わせ、心の中で察した。
しかし雪村真理には自分なりの疑念があった。
「田中社長は私たちの進捗状況を手に取るように把握している。内通者がいるようね」
「でも今は証拠がない。数千万円の石が目の前からなくなったなんて言ったら、誰がもう私にジュエリーデザインを頼むかしら?それに引き渡し書にはあなたのサインがあるから、あなたが責任を取ることになるわ!」
雪村真理は彼女に予防線を張っていた。もし最終的に証拠が見つからなければ、彼女がすべての結果を背負うことになる。
林知恵は深く息を吸い込んだ。「わかっています」
内通者については、彼女は実際すでに心当たりがあった。
今最も重要なのは証拠を見つけることだ。
少し考えた後、彼女は電話に出ることにした。
「知恵さん、ジュエリーデザインの進み具合を聞こうと思って」
林知恵はわざと困ったふりをした。「田中社長、個人的にご説明してもよろしいでしょうか?」
「個人的に?いいよ、いいよ、場所を送るから、そこに来てくれればいい」田中広志は笑いながら言った。
「わかりました」