第153章 何もなくなった

しばらくして、病室の外。

宮本当主と宮本深が外に向かって歩いていた。父子二人は左右に並び、威厳に満ちていた。

当主は手を後ろに組み、静かに言った。「昨夜、和秋と一緒だったのか?」

「ああ」

宮本深は短く答えた。

当主は頷いた。「お前ももう若くない。心を落ち着けて家庭を持つ時だ。折木和秋が鉱山の問題を解決したら、折木家をそれ以上追い詰めるな」

「わかった」

「もういい、見送りはいい。和秋のところに戻って、他のことに気を取られるな」

当主は多くを語らなかったが、この短い言葉の中に込められた深い意味を宮本深は理解していた。

エレベーターのドアが閉まると、田中慎治が隣のドアから出てきた。

「三男様、管理人は確かに昨日の道路の監視カメラを調べました」

「宮本康弘だな」

宮本深は窓際に立ってタバコに火をつけた。半開きの目は指先から立ち上る煙の中にぼんやりと霞んでいた。