第159章 結局、誰の利益になるのか?

部下が松本香奈にバッグを渡した。

林知恵は素早く解除パスワードを伝えた。

松本香奈は携帯とパソコンの内容をすべて確認したが、仕事関連と雑談だけで、いわゆる動画や写真は全くなかった。

彼女は眉をしかめ、まだ信じられないようだった。

林知恵は水中で陶片を使ってロープを切りながら、話題を変え続けた。「松本さん、もし私がまだ何か隠していると思うなら、パソコンや携帯に詳しい人に徹底的に調べてもらえばいいですよ」

その言葉を聞いて、松本香奈は実際にそうした。

パソコンと携帯の画面に進行バーが点滅するのを見て、林知恵は内心少し安堵した。

彼女の携帯とパソコンには大学4年間の設計資料や原稿がぎっしり詰まっており、これらを検索するのは非常に手間がかかる。

ちょうどロープを切断する時間を稼げた。

しかし、ロープをほぼ切り終えたところで、検索が終わってしまった。

「お嬢様、何もありません」

松本香奈は林知恵の携帯を奪い取り、信じられない様子だった。

この瞬間、林知恵の心には複雑な感情が湧き上がった。

宮本深が彼女の携帯から証拠をこれほど徹底的に削除してくれたことに感謝すべきだった。

「ありえない!」松本香奈は林知恵を引っ張った。「またわたしを騙そうとしているの?」

林知恵は冷静さを保った。「そしてあなたに殺されるのを待つとでも?松本さん、あなたは馬鹿じゃない。よく考えてみて、私とあなたには恨みも怨みもないのに、なぜあなたを騙す必要があるの?」

「あなたは三男様を誘惑しようとして、折木和秋に罪をなすりつけたのよ!私たちを仲違いさせようとしているんでしょ!」

「では松本さんは、私にしたように折木和秋にも同じことをするのですか?」

松本香奈はドキッとして、黙った。

「あなたはしないでしょう。彼女の背後には三男様がいるから。だとしたら、私が罪をなすりつける意味は何があるの?でももし私が死んだら、それは誰の利益になるの?松本さん、今日ここから出られないことはわかっています。死に臨む者の言葉は善なるものです」

林知恵は顔色が青ざめて松本香奈を見つめ、諦めの表情を浮かべた。

松本香奈は躊躇して何も言わなかった。

その時、林知恵はロープを切り、足を動かして体に絡まったロープを振り払った。