第160章 死すら恐れぬのに、これが怖いのか?

看護師も素早く林知恵に針を刺し直して点滴を再開した。

処置が終わると、宮本深は木村悦子を見た。

「先に出ていけ」

木村悦子は腹部を押さえながら、先ほど宮本深に引っ張られた腕をさすった。「これは業務災害だぞ!」

病室のドアがゆっくりと閉まり、部屋には林知恵と宮本深だけが残された。

林知恵は我に返り、男の腕から逃れようとした。

しかし彼は背後から彼女をしっかりと拘束し、温かい胸元から少し強引さを感じさせ、強烈で支配的な雰囲気が彼女を包み込んだ。

彼は低く冷たい声で言った。「彼女が来ることを知っていたのか?」

「知りませんでした。叔父さんは私が賢くないと言いましたよね?どうして他人の心を読み取れるでしょうか?」林知恵は小声で答えた。

「強情に答えるのか?」

男は林知恵の後ろに座っていたので、表情も見えず、感情も読み取れなかった。

ただ手を伸ばして布団を引き寄せ、二人の上にかけた。

男の体はとても暖かく、瞬く間に冷たかった布団の中が温かくなった。

林知恵は少し居心地が悪かったが、動くこともできなかった。

部屋は静かになり、布団をめくる微かな音だけが、何とも言えない甘い調子を漂わせていた。

しばらくして、林知恵は布団をきつく握りしめた。「折木和秋です」

「もういい、少し休め」宮本深の声が突然冷たくなった。

林知恵の体は再び冷え込んだ。

彼女の先ほどの悲惨な状態を、彼はすべて見ていたのに、この瞬間になっても、まだ折木和秋をかばっている。

林知恵は必死に呼吸した。喉が痛く、鼻腔が痛み、肺までもが痛みで震えているように感じた。

彼女は歯を食いしばって彼の体から布団を引き剥がし、自分の体に巻きつけた。

「警察に通報します。あなたが私を殺さない限り、誰も私を止められません」

松本の父は昇進したばかりで地位が不安定だ。妬む人はたくさんいる。警察署全体が松本家の人間だとは思えない。

たとえ失敗が決まっていても、彼女は池の水を濁らせるつもりだった。

「お前を殺す?」

冷たい調子が男の息遣いとともに林知恵の耳元に吹きかけられ、危険な圧迫感をもたらした。

彼女が反応する前に、彼女の腰を抱く手が布団の中を這い、服の裾から彼女の肌に触れた。

熱い手のひらは包帯に包まれ、言葉では表現できない粗さがあり、腰のラインに沿って撫でた。