折木家。
折木和秋は落ち着かない様子で居間を行ったり来たりしていた。
突然、携帯が鳴った。なんと松本香奈からのビデオ通話だった。
迷った末に、折木和秋は電話に出た。
画面上の松本香奈は全身泥だらけで、惨めな姿だった。
運転しながら、顔を携帯に近づけていた。
真っ赤な両目が何倍も大きく映り、折木和秋は怖くて後ずさりした。
「和秋、私の両親が私を海外に送ろうとしているの。三男様に頼んで、うちの家を助けてもらえるよう頼んでくれない?お願い!」
なるほど、助けを求めているのか。
折木和秋はきちんと座り、細い首を少し上げ、以前のような取り入るような態度はなかった。
「香奈、ごめんなさい。あなたの家がこうなったことについて、私にはどうすることもできないわ」
「どういう意味?昔は私があなたを宮本当主の前で良く見せてあげたのに、今になって恩を仇で返すつもり?それに今回も、私が林知恵を誘拐したのはあなたのせいよ!」