第168章 私はあなたに噛ませたわけじゃない

田中慎治は宮本深のそばに戻り、小声で言った。「三男様、林さんは自分で行ってしまいました。」

宮本深は数秒黙った。「彼女を見張る者を付けろ。」

「はい。それから……」田中慎治は彼の耳元に近づき、小声で何かを伝えた。

宮本深は無表情でうなずいた。

彼は折木和秋のそばに歩み寄り、手を伸ばして彼女の荷物棚からバッグを取り、ついでに腕にかけていた上着を彼女の肩にかけた。

「山都は京渡市より寒い。」

「うん。」

折木和秋は恥じらいの表情で、非常に熱心な眼差しを向けた。

周りの客たちは羨ましそうに彼女を見つめていた。

……

林知恵は荷物を受け取った後、雪村真理を見つけた。

雪村真理は一人だった。

「折木和秋は私たちと一緒に行かないわ。」

「うん。」

林知恵はそうだろうと思っていた。