第212章 私だと覚えておけばいい

宮本康弘が縛り上げられたとき、林知恵はようやく自分が本当に安全だと確信できた。

この時、彼女はすでに全身冷や汗をかき、体はぐったりとしていた。

倒れそうになったとき、一対の手が彼女を支え、抱き上げて外へと運んでいった。

前世と全く同じ光景。

唯一違うのは、今回は二人とも無事だということ。

林知恵はすべてが夢ではないかと恐れ、手を上げて男の顔に触れた。

無精ひげが生えていた。

「チクチクする」

「後で剃るよ」宮本深の口調は明らかに和らいでいた。

「深さん」

林知恵は彼の眉や目を優しく撫で、小さな声で呼びかけた。

その声を聞いて、彼は足を止めた。

「ん」

返事を聞いて、林知恵はすっと力が抜け、暗闇に沈んでいった。

この眠りは、天地がひっくり返るほど深いものだった。

夢の中で、彼女は封印されていた記憶を取り戻した。