第229章 彼だったのか

温かい水が喉を滑り込み、林知恵の喉の不快感を和らげた。

彼女は次第に落ち着いてきた。目の前の人の温かい指先が彼女の唇を撫で、まるで宝物に触れるかのようだった。

彼はどんどん近づき、熱い息が林知恵の顔にかかった。

彼女は本能的に息を止めた。目の前はぼんやりしていたが、彼が自分にとても近いことを感じることができた。

少し動くだけで、お互いの唇が触れ合うほど近くに。

そのとき、薬の効果が完全に現れ、林知恵は全身の力が抜けてソファに倒れ込んだ。

すぐに大きな体が近づいてきて、彼女をしっかりと抱きしめ、耳元は彼の心臓の鼓動で満たされた。

それでも安心感があった。

うとうとする中、彼女の額に柔らかい感触が伝わってきた。

「眠りなさい」

低い声は魔法のように、林知恵を安らかに闇の中へと誘った。