第230章 ここを火で燃やす

山田さんは林知恵が自分で忘れていたと思い、キッチンに戻って取り出し、彼女の前に置いた。

それは控えめながらも高価な男性用腕時計だった。

林知恵はすぐにそれが宮本深のものだと分かった。

なぜなら、彼女は全く同じデザインの女性用腕時計を持っていたからだ。

しかし昨晩キッチンを片付けた時、確かにこの時計はなかった。

つまり...熱を出した時に彼女に付き添っていたのは宮本深だったということだ。

桑田剛はお粥を彼が用意したとは一言も言っていなかった、彼女が勝手に思い込んでいただけだった。

まるで夢のような出来事を思い出し、林知恵の手が少し震え、生姜茶をこぼしてしまった。

山田さんは急いでティッシュを取り出して拭き始めた。「どうしたの?」

林知恵は窓の外を見て、突然時計を手に取り外に飛び出した。