二つの箱にはそれぞれ二種類のネグリジェが入っていて、一つは可愛らしく、もう一つはセクシーなものだった。
しかし露骨なものではなく、ただデザインに少し工夫が凝らされているだけだった。
桑田蘭子は林知恵がよく見えないかもしれないと思い、わざわざ二着のネグリジェを取り出して目の前で広げてみせた。
自分で広げるだけでは足りず、さらに林知恵の体に当ててみた。
「知恵、私あなたが羨ましいわ。あなたは綺麗だし、スタイルもいいから、何を着ても似合うわね」
林知恵は言葉に詰まり、こっそり呼吸を整えてから穏やかに微笑んだ。
彼女は無意識に拒絶するようにネグリジェを押しやった。「あなたが着ても素敵よ。取っておいて交換して着るのもいいんじゃない」
「じゃあ、私はどっちを先に着ようかしら?婚約パーティーの夜に着るつもりなの。選んでくれない?できれば三男様が...目を離せなくなるようなのがいいわ」
桑田蘭子は少し恥ずかしそうにしていたが、目に宿る愛情は隠すことなく溢れていた。
自由に愛を表現できる彼女を見つめながら、林知恵の瞳は何かに刺されたかのように痛み、すぐに視線を落とした。
「蘭子、やっぱり他の人に選んでもらったほうがいいわ。私には選べないわ」
「宮本家は上から下まで厳格すぎるのよ。誰に頼めばいいの?あなたはデザイナーだから目が確かでしょう」
桑田蘭子は林知恵の手を握ってゆさゆさと揺らし、目には頼み込む気持ちが満ちていた。
林知恵はどうしても断れず、可愛らしいネグリジェを指さした。「これはどう?可愛らしくて少しセクシーに見えるわ」
桑田蘭子の頬が紅潮した。「あなたの叔父さんがこういう雰囲気好きだなんて思わなかったわ」
「そういう意味じゃないの」林知恵は気まずそうに説明した。
「わかってるわ。私も彼がこれを気に入ると思う。大学の頃、彼が誰かに私のことを可愛い人だって褒めてたの覚えてるわ」
桑田蘭子はまばたきをして、幸福感で顔全体が柔らかな光を放っているようだった。
対照的に、ガラスに映る林知恵の顔は非常に青白く、陽の光が当たっていても白さが透けて見えた。
彼女は無意識に桑田蘭子に合わせて微笑んだ。
どうせ夫婦の戯れなのだから、何を着るかは重要ではない。
重要なのはそのネグリジェを着る人だ。
宮本深は桑田蘭子が好きなのだ。