第251章 彼に自ら口づけ

夜食はそこまで大したものじゃない。

木村悦子と田中慎治は半袋のひまわりの種をかじりながら、やっとこさ料理を持ってきた。

見てみると、なるほど。

もたもたしていた割には、千切りジャガイモ、トマトと卵の炒め物、ガーリックローストエビ。

ローストエビは何匹か焦げていた。

木村悦子はため息をついた。「あなたたち二人はきっとお腹いっぱいなんでしょうね」

宮本深は箸と茶碗を置いた。「ドアはあそこだ、さっさと出て行け」

「いやいや、冗談だよ」木村悦子は急いで茶碗を受け取り、真面目な顔で言った。「林知恵、ごちそうさま」

木村悦子がいるせいか、林知恵はこの家がそれほど冷たく感じなくなった。

彼女は微笑んだ。「さあ、食べましょう」

食事の途中、林知恵は携帯を取り出した。

「母が言うには、盗んだ人が見つかって、彼女も退院したそうよ。あと三日で新年だから、会いに来てほしいって。ちょうど私も仕事の締めくくりがあるし」

「どんな仕事？」木村悦子は余計なことを聞いてしまった。

「三男様と桑田さんの結婚指輪ができたの」林知恵は淡々と言った。

木村悦子は目を閉じ、自分の口を叩きたい気分だった。

彼は急いでフォローした。「お正月だし、お義母さんがあなたに会いたいのは当然だよ。それに彼女はあんなに大変な目に遭ったばかりだから、娘がそばにいれば安心するだろうね」

言い終わると、林知恵は宮本深を見た。

宮本深は平然としていて、まるで誰も結婚指輪のことを言及しなかったかのようだった。

「その時は君を宮本家に連れて行こう」

林知恵はうなずいた。

結婚指輪の話題はそのまま終わり、まるで存在しなかったかのようだった。

食事の後、木村悦子は病院に戻らなければならないので帰った。

宮本深も電話を受けて出かける準備をした。

誰からの電話かは、二人とも分かっていた。

林知恵は彼をドアまで見送り、彼が車に乗り込もうとしたとき、突然彼を呼び止めた。

「三男様」

宮本深が振り返ると、林知恵は彼の胸に飛び込み、つま先立ちで彼に近づき、トンボが水面に触れるように軽くキスをした。

これは林知恵が初めて彼に積極的にキスをした瞬間だった。

彼は一瞬驚き、目を深く沈め、手を上げて彼女の頭を支えながらそのキスを深めた。

しばらくして彼は止め、長い間呼吸を整えていた。