第313章 人を害する者

突然の声に、林知恵はびっくりした。

手に持っていた包丁が震え、直接指を切ってしまった。

鮮血が滴り、瞬く間に野菜の葉が赤く染まった。

彼女が手を洗おうと伸ばした時、手首が宮本深に掴まれた。

「感染に気をつけて」

彼は彼女の手を支え、振り返ってガーゼを取り出し、傷口を拭いてあげた。

「ありがとう、自分でできるわ。蘭子が来たから」

キッチンのドアで桑田蘭子の悲しげな視線に気づいた林知恵は、礼儀正しく二人の距離を広げようと、自分の手を引っ込めようとした。

しかし宮本深はさらに強く握りしめた。「動かないで」

林知恵は少し戸惑った。

彼は聞こえなかったのだろうか?

蘭子が来たのに。

以前なら、彼は決して蘭子をこんなに無視することはなかっただろう。

桑田蘭子も宮本深の態度に気づき、顔から血の気が引き、体がぐらりと揺れ、ドアに寄りかかって崩れ落ちた。