林知恵はぼんやりとした頭で階段を降り、庭園に座ると、以前は干上がっていた池が再び水で満たされていることに気づいた。
周囲の芝生も少し緑を増していた。
まるですべてが生き生きとしてきているようだった。
ただ彼女だけが場違いな異質な存在のように、全身蒼白く、再生の冬の中に閉じ込められていた。
彼女は感情を発散したかったが、誰を恨めばいいのかもわからなかった。
確かに彼女は不当な扱いを受け、苦しみ、最後には全世界が身勝手な善人になった。
ただ彼女だけが罪人となった。
彼女は自暴自棄になりかけて、自分の指を強く丸めた。
まるで痛みだけが彼女を冷静にさせることができるかのように。
突然、大きな影が落ち、林知恵の手は誰かに握られた。
「知恵」
桑田剛の声は少し息が切れていて、彼が急いで来たことを示していた。