第316章 彼らは何もできない

山田照夫は林知恵に木村悦子を引き止めておくよう頼み、自分は急いで魚を買いに行った。

ちょうど、林知恵は桑田蘭子に会いに行くところだったので、引き受けた。

いくつかのことは、やはり自分で説明した方がいい。

病室の入り口に着くと、宮本家と桑田家の人々はすでに帰っており、木村悦子と桑田剛だけが桑田蘭子の病状について話し合っていた。

彼女が来るのを見て、木村悦子は突然口を閉ざした。

林知恵は少し奇妙に感じ、尋ねようとしたところで桑田剛に話題をそらされた。

「山田照夫は一緒に来なかったの?」

「彼は……」林知恵はつま先立ちして桑田剛の耳元に近づいた。「こんな感じで……」

桑田剛はそれを聞いて非常に居心地が悪くなり、そっと木村悦子を見た。

木村悦子はすぐに不穏な気配を感じた。「二人で何をひそひそ話してるの?」

「何でもないよ」

林知恵はすぐに桑田剛の後ろに隠れた。他の人から見れば、彼女が桑田剛に完全な信頼を寄せている様子であり、恋人同士の親密な行動に見えた。

木村悦子と桑田剛は一瞬驚いた。

ちょうどそのとき、宮本深が病室から出てきて、漆黒の瞳が林知恵が桑田剛の腕を取っている手に固定された。

林知恵はそれに気づき、少し顔を上げて、その深い目と視線を合わせた。

そして、すぐに見知らぬ人のように冷淡に目をそらした。

宮本深は数秒間じっと見つめ、次第に目の光が暗くなり、自嘲気味に言った。「行くよ」

彼は林知恵に背を向けてまっすぐ立ち去った。

木村悦子はすぐに言った。「ちょっと見てくる」

二人が去った後、桑田剛はようやく振り返って林知恵を見た。

「大丈夫だよ、中に入って。何かあったら呼んでくれればいい」

「うん」

林知恵はドアを開けた。

病室内には強い消毒液の匂いがあり、桑田蘭子は枕に寄りかかり、顔全体が青白く、虚ろな目で窓の外を見つめていた。

物音を聞いて、彼女は振り向いて林知恵を見ると、目に涙が浮かんだ。

そんな桑田蘭子を見て、林知恵の心はさらに罪悪感に苛まれた。

頭の中には、桑田蘭子が渡辺青葉の前で自分を守ってくれた場面が消えなかった。

実際、桑田蘭子もとても苦しんでいるのだろう。

林知恵はベッドの側に行き、桑田蘭子の血の気のない両手を覆うように毛布を引き上げた。

「蘭子、ごめんなさい」